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zoom RSS 小説 あやかしの里(その3)

<<   作成日時 : 2011/10/07 02:20   >>

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 完璧だ!実に良く出来た作品だ!

 私を診断した精神科医は検査結果と私の双方を交互に見ながら言った。

 これほど完璧なマインドコントロールは見た事がない!

 君は40年先の未来から来たというが普通ならば、ここまで検査すれば、ほころびのひとつも出てくるのにポリグラフの結果も全くおかしいところが無い。

 まるで本当に40年先の未来から来たように完璧に答え血圧も心拍数も変化無い。

 よくSF映画なんかで見る光景だ。

 ※T2のサラ・コナーを尋問する、あのいかれた精神科医そっくりだ。

 そこまでポリグラフを信頼する根拠は無いと思うんですが。

 私が言うと彼はムッとした表情で「専門家が言うんだから間違いは無い!素人の君に何が分る」と言った。

 普段の私なら可なり頭に来るところだが検査前に注射された自白剤のせいか頭が重く反論する元気も無い。

 自白剤は脳みその筋弛緩剤のようなもので動きを鈍くする。

 よくミステリー小説なんかで使われるが実際に投与されて良く分った。

 たしかに、これでは嘘をつく元気も出ない。

 ところで、なぜ私がここに居るかというと自白があまりにもおかしいので精神鑑定をする必要があると検察側が判断したからだ。

 そういう訳で昨日と今日私は町田にある精神科の病院に通う羽目になった。

 部屋を出ると廊下のソファーに辰夫くんが座っていた。

 ※ハコスカの彼だ。

 お疲れ!

 彼は私の顔を見て言った。

 今は何も話したくないよ。

 私が言うと彼は微笑んだ。

 帰りの車の中で今日あった事を全て話した。

 なんだ元気ジャン!

 辰夫くんが言った。

 いや単に彼の問いに応えているだけ。

 つまり疲れてはいるものの相手の要求を拒む元気が無いだけなのだ。

 ※これが自白剤の効果か。

 家には涼子ちゃんが来ていた。

 彼の彼女だ。

 そうそう彼女の父親は相模原署の署長さんだ。

 当初、立件に燃えていた刑事たちも検察が消極的なこともあり起訴を断念せざるを得なくなった。というのも私に掛けられた嫌疑のどれも犯罪性は薄く立件しても無罪になる可能性が少なかったからだ。

 そもそもの容疑は無銭飲食。
 
 これは辰夫くんが後日店に出向き勘定を支払ってくれ父親が、あの女主人を説得してくれたからだ。

 そして贋金の件。

 500円硬貨はこの時代には無いものなので子供だまし以上のものでは有り得ないし実際女主人は端から本物だとは思ってなかった。

 そしてオートバイ。

 整備不良と私文書偽造(車検証の偽造)で摘発する積りだったが実際に、このバイクで走っているところを検挙したわけではないので道路交通法を適用できない。つまり車検証も効果を発揮しない。だから私文書偽造も問えないらしい。

 例えば「殺す!」と書いた手紙があるとします。誰かにこの手紙を差し出せば立派な脅迫ですが誰にも差し出さず持っているだけなら犯罪とは言えませんよね。もし仮に推理作家が単に小説のネタを書きとめたものの可能性もあるじゃないですか。

 弁護士が検察をそう説得したと辰夫くんが教えてくれた。

 そうそう、弁護士は私に接見した国選弁護人ではなく辰夫くんの父親の経営する会社の顧問弁護士らしい(私はまだ会った事がない)

 ただ私自身の素性が未だ分らないので無罪放免とは行かないらしい。

 素性が分らないと言われても私は嘘を言った覚えは無く正直に氏名と住所そして本籍を伝えたし両親の名前も伝えた。

 ※警察が長野に暮す両親に会ったところ
  私よりも若い新婚夫婦がそうだったので
  信用してもらえなかったけど。

 一度家に帰った涼子ちゃんが夕方、また来た。

 『今夜映画を観に行かない?』というデートのお誘いだった。

 ただ私も誘われた。

 どうやら私は涼子ちゃんの両親を安心させるための口実のようだ。

 まあ、それでも誘ってくれるのは有り難い。

 私たちはハコスカに乗りR16を北上し八王子を目指した。

 どうやら彼女は前から観たかったらしい。

 だけど相模原でやっている時は観る事が出来ずズルズル来たらしい。

 そういう訳で私は幸運にも大スクリーンであの名作を堪能する事ができた。

 上映が終わったのは午後9時前だった。

 2001年に本当にこんな宇宙旅行が出来るのかしら?

 涼子ちゃんは帰りの車の中で夢見るように言った。

 今年月まで行ったんだから30年後に木星くらいは行くんんじゃない?

 辰夫くんは車を運転しながら言った。

 2011年の世界から来た私にとって2001年の世界がいかなるものかは当然知っているのだが、あの凄惨な事件もあり、あまり触れたくなかったので黙っていた。

 ねえ須藤さん、どうなってるの21世紀は?

 涼子ちゃんが訊いた。

 私は壁掛けテレビは実用化できなかったけど薄型テレビは商品化され携帯電話はタッチパネル化されボタンやスイッチの類は殆ど無くなりコンピュータはパソコンと呼ばれる小型コンピュータが一般家庭に普及しインターネットと呼
ばれる通信網が世界中に張り巡らされ子供からお年寄りまで幅広く利用してる事を話した。

 A4版の大きさで10万円しないコンピュータがアポロを打ち上げたNASAのコンピュータの何百倍もの性能なんですか?

 辰夫くんは驚いたように言った。

 だったら木星なんて言わないでアンドロメダまで、ひとっ飛びじゃないんですか?

 涼子ちゃんが助手席から振り向いて訊いた。

 私はアポロ13号の話や財政面で17号で中止となりスペースシャトルでの地球上空数百kmのみの計画になった事を話した。

 須藤さんの話聞いてると、まるで本当の事のよう!

 涼子ちゃんが、また夢見るように言った。

 ホント、リアルだよな須藤さんの話。

 辰夫くんが言った。

 私は別に作り話をしている積りはないのだが。

 翌朝、警察署に私を訪ねてきたバイクメーカーの人が来た。

 彼らの話によると、どうやらバイクは手元に返るらしい。

 メーカーの人たちが「自分たちの試作車がテスト中に目を離した隙に何者かによって盗まれた」という事にして警察から受け出してくれたらしい。

 「ちゃんと形式認定も取って公道を走れるようにしましたから」メーカーの人はそう言って真新しいナンバープレートと車検証そして譲渡証を私に手渡してくれた。

 ナンバープレートを見ると何と『兵』ナンバーだった!

 おそらく『兵』ナンバーを付けたゼファー750は世界広しといえども、これだけだろう。

 でも私は愛車にはまだ乗れない。
 
 免許が無いからだ。

 私の持っていた免許証(まだ返してくれない)は、この時代では使えない。

 そこで新たに免許を取得する事になったのだが…

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